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男勝りのライオンハート-愛犬ももの思い出2-

 どういう犬種の遺伝なのかは分かりませんが、とにかく気の強いこと夥しかったももの思い出を語りたいと思います。とにかく嫌と言ったら梃子でも動かない頑固さと、あくまでも従順なウルフドッグ系の気性を持った彼女は、普段はつまらないことで他の犬を威嚇したりしませんが、相手の犬に挑まれるとその気の強いこと強いこと。かなりの力で引っ張っても、なかなか抑えられないほどの闘争本能の持ち主でした。

 ももが4才頃のことですが、兄が飼ったメスのブルドッグを何度か中期間預かることがありました。1回に2~3ヶ月は預かるのですが、ももよりも小さいこの犬を、私達は玄関奥の犬舎に入れ、ももの犬舎を玄関よりにずらして、ちょうどももを門番役にしていました。ブルドッグを飼ったことのある方、あるいはパグなど同じストップがきつくて頭の大きな犬種を飼った方ならご存知だと思うのですが、あの犬種は鼻のラインに屈折した部分があり、そのため空気の通りが悪くて、結果として大鼾を掻くのです。そうすると最も被害を被るのは、もともと音に敏感な他の犬、当家で言えばももなのです。ももはこのブルドッグが居た時は、よく寝不足になり、昼間に白河夜船を漕いでしまって倒れそうになっていました。(犬の居眠りというのはそうそう見る経験はないので、貴重な体験ではあったのですが・・・。)可愛そうに不眠によるストレスは、鼻の辺りの毛が抜けるという形で現れ、ちょっと見ると口から鼻の辺りが真っ黒で、ちょうど炭焼きの伯父さんのようでした。しかし、彼女にとっての絶対権力者(=ご飯をくれる人)であるお袋から、可愛がるように毎日言い含められていた手前、彼女はブルドッグを疎ましいと思いながらも、邪険にせずに静観を決め込んでいました。

 ところが或る夜、ブルドッグも2回目の発情期を迎える頃となり、そこらのオス犬がそれを感じ取って、襲撃(夜這い)を敢行したところに立ちはだかったのが、その時子宮そう破をしてしまっていたももだったのです。恐怖に震えるブルドッグの遠吠えと、オスの恫喝するような雄叫びとももの吼え声が交錯し、深夜の巷は騒然としたため飛び起きた私の目に映ったのは、ももの倍以上はあろうかというオス犬が、後ろ足を引き摺り加減で逃げていく後姿でした。そうです、ももがオス犬を撃退し、見事ブルドッグの貞操を守り通したのです。彼女の私を見上げる得意気な顔が、今でも昨日のことのように思い出されます。メスで小型犬なのですが、ライオンハートの持ち主の晴れ姿でした。

 この一緒にいたブルドッグは、ももに対しては大変従順で、大きくなってからたまに我家に遊びに来ると、うれしいといわんばかりに家族やももにじゃれつきます。しかしいくらブルドッグが大きくなっても、小さい頃の序列はきっちり生涯付きまとうようで、自分より大きい相手に対しても、相手に粗相があるときは、額に前足を突き立てて静止をするのがもも一流の権威の現し方でした。ですからブルドッグはももを尊敬してましたし、だからこそももの前では辞を低くしたり、腹を見せたりして恭順を表すのが常でした。自分の方が年嵩が上でも、この関係はなかなか成立しづらいと傍目に映りましたから、ももはやっぱり姐御肌のライオンハートなのだなと、今でも思っている私です。

 しかしそんな男前(?)のライオンハートにも、どうにも克服できない弱みがありました。それが犬猫病院で、その建物の前に来るともう尻尾を丸めて毛を逆立てて怯えてしまうのです。注射をされたり、子宮そう破したりあまりよい思い出がないせいでもあるのですが、普段の気の強さはどこへやら、からきし意気地のなくなるももに、ライオンハートも形無しじゃのーと独り合点する私なのでした。

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